ヨーロッパ

イギリスの産業革命②/実際にどんな技術革新があったのか?

歴ブロ

前回はヨーロッパ各国の徐々に起こった大航海時代重商主義などから始まった変化、イギリスで最も経済的に貢献したインドとの貿易摩擦から自国で綿織物を作り始めていたこと、農業革命などで産業革命の土台が出来上がっていったことをお伝えしました。

ここでは、実際に産業革命でどんな技術を作り上げられていったのか具体的なお話をしていこうと思います。

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工場制手工業から工場制機械工場へ

中世末期~近代初め頃から始まった商人が農民や手工業者に原材料を手渡して生産を受注する方法【問屋制家内工業】の規模が拡大。地主や商人などの資本家が工場を作って賃金労働者を集め、分業や協業による流れ作業【工場制手工業マニュファクチュア)】が行われるようになっています。

イギリスでは主に中世末期15世紀末の毛織物産業においてマニュファクチュアが行われていました。特に16世紀半ばごろ~18世紀後半の時期は『本来のマニュファクチュア』と呼ばれ、繊維工業・金属工業などの工業部門でも工場制手工業が盛んに行われました。

技術面の革命/綿工業の発展

1733年にはジョン・ケイにより飛び杼が発明され、手動織物機の生産性が一気に跳ね上がっています。なお、足踏み式の水平織機は10~11世紀の時点で既に導入されており、飛び杼の発明によって横糸を通すのが飛躍的に早くなったということのようです。

水平織機の仕組み
🄫ClemRutter『ジョン・ケイが発明した自動織機の飛び杼』(WikimediaCommons)より

あまりにも生産性が上がりすぎて綿糸の供給が追い付かず、さらに簡単に織物が作られるようになったことで職人たちからジョン・ケイは目の敵にされていたとか。

ですが、その問題は綿糸を生産する紡績機の技術革新を促しました。

1760~70年代にかけてハーグリーヴズによる複数の紡ぎ車(ボビン)を備えたジェニー紡績機アークライトによる水力紡績機、両方を兼ねそろえたクロンプトンによるミュール紡績機など次々に発明されます。

れきぶろ
れきぶろ

紡績機の発明した人の中にはジョン・ケイと同姓同名の全くの別人もいたとか。

さらにカートライト(1743~1823年)が水力を動力源とした自動化された織物機・力織機を発明し特許を獲得。

19世紀には紡績機も織物機も全自動化され職人たちの手を不要とするようになり、品質の保たれた綿糸・織物が大量に供給されたのです。

こうして作業を効率化する機械が発明されたわけですが、なかでも「水力」を使用する発明は動力を人の手としないため、かなり画期的な技術となっています。

動力源の革命/蒸気機関の発達

水力紡績機の登場がかなり画期的という話が出てきましたが「水力」という特性上、限られた土地でしか自動化された紡績機を使うことは出来ません。気象条件なども大きくかかわるため少々不便を感じるようになりました。

そこで新たな動力として着目されたのがイギリスで豊富に採れる石炭です。

なお、この時点で既に熱エネルギーを利用する動力源は考案されていました。いわゆる蒸気機関と呼ばれるものですが、意外と蒸気機関の発明は古かったりします。

最も古い蒸気機関とは?

もっとも古いものだと古代ローマ時代に「ヘロンの蒸気機関」と呼ばれる蒸気タービンが考案されていました。

他のモノにも言えることですが、古代ローマの技術は衰退したり失われていたりする中で蒸気機関に関してもしばらく停滞。17世紀頃になって、ようやくフランスやイギリスでも関連技術が度々発明されるようになっています。

※調べた限り蒸気機関と思われる記載は17世紀頃のものまでは分かりませんでした

いよいよ動力源も実用化!!

そして、いよいよ実用化されたのがニューコメン(1663~1729年)の蒸気機関。鉱山の排水・揚水用のポンプの動力源として誕生します。

この蒸気機関をさらに改良させたのがスコットランドのエンジニア、ジェームズ・ワット(1736~1819年)です。ワットの蒸気機関は高い熱効率を誇り、様々な動力源として用いられる道筋が出来上がっていました。

蒸気機関は、似たような時期に開発されていた水力以外の紡績機を発展させただけでなく

  • 機械を生産するための機械工業
  • 機械の原料である鉄を生産する製鉄業
  • 原料や生産物を大量に輸送する乗り物の製造業
  • 乗り物を運行させるための交通業

など多岐にわたる分野で大きな影響を与えたのでした。

交通革命/蒸気船・蒸気機関車の発明

交易の商品である綿織物やその原料となる綿糸を作る機械を作れるようになったのと同じくらい大きなインパクトを与えたのが蒸気船蒸気機関車の発明です。

蒸気船は1807年にアメリカのロバート・フルトン(1765~1815年)が試作しています。

れきぶろ
れきぶろ

フルトンは産業革命で社会変革が起こっていた頃にイギリスで画家の勉強をしていましたが、興味が産業技術に変わり、蒸気船まで作ったようです。

また、1814年にはイングランドのジョージ・スティーブンソン(1781~1848年)蒸気機関車を製造しました。「鉄道の父」と呼ばれ、現在の軌間(レールの間隔)の標準軸でもあります。

どちらの発明も交易に使用されたことはもちろんですが『大人数のヒトを運ぶ』『大量のモノを運ぶ』点で軍事的にも大きな影響を与えることに。

産業革命を展開した重要人物たち

ということで、改めてここで紹介した人物と発明品をまとめると

  • ジョン・ケイ(1704~64年頃):飛び杼
  • ハーグリーヴズ(?~1778年):ジェニー紡績機
  • アークライト(1732~92年):水力紡績機
  • クロンプトン(1753~1827年):ミュール紡績機
  • カートライト(1743~1823年):力織機
  • ワット(1736~1819年):蒸気機関の改良
  • ロバート・フルトン(1765~1815年):蒸気船
  • ジョージ・スティーブンソン(1781~1848年):蒸気機関車

こんな感じです。

以上のような発明によって社会構造は大きく変化し様々なインパクトを与えるわけですが、どんな影響を与えたのかは、また次回の世界史の記事でお伝えしようと思います。

ABOUT ME
歴ブロ・歴ぴよ
歴ブロ・歴ぴよ
歴史好きが高じて日本史・世界史を社会人になってから勉強し始めました。基本的には、自分たちが理解しやすいようにまとめてあります。 日本史を主に歴ぴよが、世界史は歴ぶろが担当し2人体制で運営しています。史実を調べるだけじゃなく、漫画・ゲーム・小説も楽しんでます。 いつか歴史能力検定を受けたいな。 どうぞよろしくお願いします。
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