宗教

端麗王・フィリップ4世は何をした人?

歴ブロ

カペー朝で覚えておくべき人物の3人目は端麗王フィリップ4世(在位1285~1314年)です。

容姿端麗ということで端麗王というあだ名がつけられています。禿頭王とか肥満王とか歴代国王達が付けられていたので、かなり恵まれたあだ名ですね。

今回はそんなフィリップ4世が作り上げていった治世の中でも特に覚えておくべき『教会関連』の政策のうち『対策が行われた背景』から『実際にどんな政策を行ったのか?』までをまとめていこうと思います。

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当時の状況を見てみよう

十字軍遠征以降の西ヨーロッパでは遠征の際に通り道で物資を調達していたり各地で農業生産に力を入れた結果、商業が発展しつつありました。

中でもフランドル地方含む北ヨーロッパ商業圏地中海商業圏といった海を用いた商業圏と両商業圏の間のシャンパーニュ地方が発展するようになります。

ヨーロッパの商圏

また、これまで強かったローマ教会や諸侯・騎士の権威が弱ってきた状況から王権が一歩優位な状況に変化し始めていました。とは言え、都市が強くなりつつあったため強くなりすぎる前に抑えておきたい。

そんな意図を国王や国王周辺の者たちは持っていたのかもしれません。

シャンパーニュ伯ナバラ王の娘とフィリップ4世が結婚し、国王領をより強固にしています。

イングランドとの関係の変化

シャンパーニュ地方は昔からの国王領本拠地のお隣で、シャンパーニュ伯はイベリア半島の北東部ギュイエンヌ(アキテーヌやガスコーニュといったイギリスが支配していた地域)の西南に位置するナバラ王国も支配していました。

つまりはフィリップ4世がフランス王兼ナバラ王となったことを意味します。

※違う地図を二つ使って描いた地図なので正確性には欠けています。

地図を見ると『ナバラフランスギュイエンヌが挟まれている』点が確認できます。フィリップ4世がギュイエンヌを挟撃できる場所を支配するようになったわけです。

イングランドとしては恐らくフランスを相当意識しなければならない状況になっていたと思われます。

フィリップ4世とフランドル地方

そんなフィリップ4世が最も注目していた地方がフランドル地方。この地方はイングランドから輸入した羊毛を加工した商品を海運を通じて売買しており、非常に豊かな土地になっていました。

※ちょっと雑な覚え方ですが...某ひつじのクレイアニメはイギリスが舞台です。のちの産業革命でも羊毛がキーワードになるので、イギリス→羊として覚えておいて損はないと思います

フランドルはイングランドとは切っても切れない関係であり、逆にフランドルを思い通りにしようとする王家とは仲が悪い状態。1297年以降『フランドル+イングランド』と『フランス王国』はぶつかり合うようになりました。

さらにフランドルのバックについているイングランドを落とすためにもフィリップ4世はナバラを介して挟み撃ちの出来るギュイエンヌを手に入れようと動きはじめ、いよいよ戦争が勃発。戦争は思った以上に長期化していきます。

戦争費用捻出のためにしたこととは?

この戦争費用捻出のためフィリップ4世が行ったのが聖職者への課税の強硬です。当然、聖職者や教会、教皇は怒って両者はぶつかるようになります。

この時の教皇はボニファティウス8世でした。

ボニファティウス8世は「教会最高!」の教会至上主義者であったとも言われており、とにかく両者はぶつかりまくります。

このように考えたフィリップ4世は、神聖ローマ帝国やイングランドでも設けられるようになった身分制議会・三部会を開催。

  • 聖職者
  • 貴族
  • 平民

異なる身分で合同会議を行って「教会への課税をどうするか」国民の支持を取り付けた上で税を課そうとしていました。

これを受け入れられない教皇側はフィリップ4世を破門にして対抗。

その更なる対抗策として国王は

悪徳教皇弾劾すべし


として公会議を開いた上でボニファティウス8世を襲撃しています。これが世に言うアナーニ事件です。

ローマ市にある教皇の離宮があるアナーニという場所で襲撃されたことから「アナーニ事件」の名前がつけられました。

この一件によって教会の衰退が表立つようになっています。なお、この襲撃には両親を異端審問にかけられ処刑されてしまった官僚が関わっていたそうです。

ボニファティウス8世は襲撃でショックを受けて一ヶ月後に急逝(憤死したと言われています)し、事件の幕は閉じました。「憤死」と言われるのはあまりにもタイミングが出来過ぎの死だった為。実際には持病で亡くなったそうです。

アヴィニョン捕囚とは?

アナーニ事件によりローマ教皇を失い、次の教皇を毒殺(疑い)され...その後に地位を引き継いだ教皇はフランス・ボルドーの大司教クレメンス5世でした。

場所が場所だけにフランスの影響を大きく受けた人物で、フィリップ4世は彼を擁立しています。終いにはローマ教皇であるにも関わらずローマへは向かわず教皇庁をフランス南東部のアビニョンに遷して政務を執り行っていました。

ローマに住む人たちをはじめ「ローマを拠点に置いてこそローマ教会!」と考える者たちは多くいましたから、その人たちから見れば「フランスに監視させられながら政務させられている」となるわけで...

そういった見方がなされていた事もあって、ユダ王国がなくなった後に新バビロニア王国に強制連行されたバビロン捕囚にかけてアヴィニョン捕囚(1309〜77年)と呼ばれています。

ということでアヴィニョン捕囚をキッカケとして、やがて

  • ローマ拠点に置いた方が良い派
  • フランス国王の支配下にあった方が良い派

に完全に分裂し教会大分裂と呼ばれる事態に繋がっていくのですが、これはフィリップ4世の治世よりだいぶ後のお話になります。 

こうしてフィリップ4世は教会との立場を明らかにしつつ資金調達を目指したわけですが、もう一つ教会絡みの場所から資金を調達しようとしていました。

それがテンプル騎士団です。テンプル騎士団を解散させたうえで、騎士団の財産を手に入れられないか考えるようになっていきました。

テンプル騎士団の解散

テンプル騎士団とは、ドイツ騎士団・聖ヨハネ騎士団と並ぶ三大宗教騎士団に名を連ねる騎士団の一つです。

元々12〜13世紀頃第一回十字軍で得た聖地イェルサレムを防衛しイェルサレムへ向かう巡礼者を保護する役割を担っていました。宿舎の用地として「神殿の丘」が与えられたことがテンプル騎士団の名前の由来となっています。

テンプル騎士団は、第2回十字軍ではルイ7世(ルイ7世は奮闘を讃えてパリ郊外に土地を寄贈しています)第3回の遠征ではフィリップ2世リチャード1世を助け、その強さと勇猛さが知られ名声を高めていました。

同時に組織が大きくなるにつれて莫大な財産と権力を持つようになります。この莫大な財産にフィリップ4世は目をつけたのです。

彼はテンプル騎士団の総長を呼び出すと「悪魔崇拝をしている!」として騎士団の財産を没収した上に「異端審問」を開いて有罪としています。完全な濡れ衣です。

総長だけでなく騎士団の構成員15,000人を逮捕すると、拷問による自白の強要に火刑に処すように。中には「国王に自白を強要された」と聖職者の前で告発する者もいたようですが、テンプル騎士団は非業な最期を迎えることとなりました。

この時にメインで関わったのが国王以外にフランス国王の監視下に置かれるようになったローマ教皇・クレメンス5世です。

テンプル騎士団の総長ジャック・ド・モレーは

「我々は無実だ!」

として死の前に訴え、フィリップ4世クレメンス5世を呪ったとされています。

両者共に同年亡くなりますが、フィリップ4世は亡くなったこと以外にも次々と災難に見舞われていきました。

フィリップ4世が見舞われた災難とは?

これはフィリップ4世没後の話となりますので直接彼の治世とは関係しませんが...

成人した息子が4人いたにも関わらず誰1人として長期政権を築けず、孫も夭逝した件はテンプル騎士団の呪いとして恐れられていたことを追記しておきます。

エドワード3世とカペー朝

また、娘のイザベルはイングランドに嫁ぐも夫が同性の幼馴染や側近と不倫(疑惑)の末に領地を没収されるといった苦労をしています。

れきぶろ
れきぶろ

フィリップ4世の死後にもフランスのイングランド領をめぐるイザコザが続いており、百年戦争の間前哨戦・サン=サルド戦争が勃発。

イザベラの領地を介してイングランドへ攻め込んでくるかもしれないという恐れから領地を没収されてしまったのです。夫には同性との不倫に悩まされ領知は奪われ...と散々でした。

イザベルは領地没収以前の時点で夫との仲は最悪で度々実家へ帰って廃位を画策していました。そんな最中に兄達の妻が騎士と不倫するスキャンダルを発見(ネールの塔事件)。このスキャンダルによるストレスがフィリップ4世の死期を早めたのでは?と言われています。

一家にとって災難が続いていた上での断絶なので、「呪いだ」と誠しやかに言われるようになったのです。

実際に呪いかどうかは分かりませんが、このような経緯でカペー朝が断裂して百年戦争に続いていくことになります。

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歴ブロ・歴ぴよ
歴ブロ・歴ぴよ
歴史好きが高じて日本史・世界史を社会人になってから勉強し始めました。基本的には、自分たちが理解しやすいようにまとめてあります。 日本史を主に歴ぴよが、世界史は歴ぶろが担当し2人体制で運営しています。史実を調べるだけじゃなく、漫画・ゲーム・小説も楽しんでます。 いつか歴史能力検定を受けたいな。 どうぞよろしくお願いします。
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