ロシアの地理・気候・特徴を見てみよう
最近の世界情勢が気になるのと百年戦争がキリの良いところで終わったので、急遽「ロシア史」を取り上げてみようと思います。
今回は現代の時事問題にも繋げていきたいので、どんな産業があるかまで掘り下げてまとめていきます。
ロシアの地理的特性を見てみよう
場所は日本の北西部にあるお隣の世界で一番広い国なので分かりやすいですね。ほぼ北緯50度以上の北方に位置しており、中でも北緯66度33分線より北は北極圏と呼ばれます。
ロシアの西側に南北に連なるウラル山脈が存在しており、「中世ロシア史」を学ぶ場合は「ウラル山脈より西側」のヨーロッパ州が舞台となっています。
なお、東側はアジア州(シベリア)と呼ばれています。
古くからロシア人が住んでいた地域には森や草原が広がり、彼らは狩猟や蜂蜜づくり、森を開拓しての焼き畑農業や牧畜、川や湖で魚を獲るような生活をしていました。
彼らはいくつかの南北を流れる大河を拠点として南北・東西に連なる道を切り開いていきました。
ロシアには世界最大の湖・カスピ海があり、カスピ海には「母なるヴォルガ」と愛着を込めて呼ばれるヴォルガ川が流れ込みます。
このヴォルガ川沿岸に位置するニジニノヴゴロドという都市でオカ川とヴォルガ川が合流。そのオカ川の支流として現在の首都モスクワに流れるモスクワ川があります。
なお、モスクワがロシアの中心となったのは15世紀頃の事。それまでは現ウクライナの首都キーウ(キエフ)がロシアの中心でした。
このキエフを通る川がドニエプル川。ドニエプル川は黒海へと注ぎこむ重要な河川です。黒海はボスポラス海峡を挟んで地中海へと出ることができる交通の要所となっています。
ロシアの気候を見てみよう
基本的に非常に寒く多くの場所が冷帯(亜寒帯)に属し、タイガ(針葉樹林)が広がっています。大陸性の気候のために雨が少なく「日中と日没後」「夏と冬」の気温差が大きいのも特徴です。
ロシアの北極圏近くの地域は寒帯(のうちのツンドラ気候)に属し、最も暖かい月の平均気温が10℃以下で樹木が育たない気候となっています。
ロシアではどんな作物が作られているの?
シベリア~ウクライナにかけて広がる黒土地帯と呼ばれる場所はヨーロッパの中でも特に肥沃な農業地帯です。下の地図を見ると、ロシア南部にはチェルノーゼムというランクAの土壌が広がっているのが分かります。
ナチスも目をつけた「土の皇帝」、チェルノーゼムが直面する危機 より
ということで、一部の豊かな土壌と広大な土地を持つロシアは小麦やトウモロコシ、ジャガイモといった穀物の生産が盛んで、世界でも有数の生産国・輸出国となっています。
なお、20世紀に入ってからは穀物の一つである稲作も試み始めているようですが、基本的に米は温暖で水が多い気候が必要なため、あくまで「試み」となっているようです。
主要農産物(品名) | 量(単位:万トン) |
---|---|
小麦 | 7,445 |
てん菜 | 5,435 |
ばれいしょ | 2,207 |
大麦 | 2,049 |
ヒマワリの種 | 1,538 |
牛乳 | 3,109 |
※数値は2019年度のもの
- 世界の穀物輸出ランキング
-
<小麦>
順位 国名 量(単位:千トン) 1 ロシア 41,419 2 米国 24,524 3 EU 23,290 4 カナダ 21,954 5 ウクライナ 17,775 ロシアの農業・農政―世界最大の小麦輸出国となった背景―より ※数値は2017/18年度のもの
<大麦>
順位 国名 量(単位:千トン) 1 EU 5,899 2 ロシア 5,873 3 豪州 5,725 4 ウクライナ 4,300 5 アルゼンチン 2,600 ロシアの農業・農政―世界最大の小麦輸出国となった背景―より ※数値は2017/18年度のもの
<トウモロコシ>
順位 国名 量(単位:千トン) 1 米国 61,935 2 ブラジル 23,500 3 アルゼンチン 23,000 4 ウクライナ 18,500 5 ロシア 5,500 ロシアの農業・農政―世界最大の小麦輸出国となった背景―より ※数値は2017/18年度のもの
こうした穀物の主な輸出先として、中東・北アフリカといった地域が挙げられます。
独立行政法人農畜産業振興機構『二兎を追うロシア農業~穀物輸出と畜産物生産・輸出の拡大~』から引用
ロシアの主要産業とは?
2019年度の業種別で見てみると…
- 第1次産業(農林水産):4.2%
- 第2次産業(鉱業・製造業など):32.2%
- 第3次産業(小売り・運輸など):63.1%
中でもロシアは第2次産業を構成する産業のうち鉱業が有名です。世界有数の資源国で資源に依存した貿易構造となっています。
※経済産業省 通商白書(2018HTML版)ロシア及び中央アジアの『ロシアの主要輸出品目』より作成
ソ連時代から石炭・石油・鉄鉱石などの鉱産資源が豊富でよく採れたためコンビナートなどの大工場地域を作っていたようですが、ソ連解体後は国力が急激に衰えてしまいました。
※鉱産資源とは、地下に埋蔵されていて社会的に利用される鉱物や岩石のことを指しています。
それでも資源の輸出や生産手段の私有化に加えてシベリアの開発も行った結果、1990年代以降、急速に経済が発展してBRICS(ブリックス:ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)の一つとして数えられるようになっています。
鉱産資源の生産量
※計46.6億kL。2018年のデータ(GAKKEN『わかるをつくる中学社会』のグラフから作成)
原油は熱源・動力源としてだけでなく、プラスチック製品や衣料品、ペットボトルやスーパーのレジ袋の原料でもあります。
その原油の約14%をロシアは担っており、パイプラインや船舶によって各国に輸出しています(後述する天然ガスも同様です)。
ロシアの代表的なパイプラインには東ヨーロッパ諸国(ウクライナ・ポーランドなど)、さらにはドイツまで伸びる世界最長のドルジバ・パイプラインというものがあり、時事問題で「ドイツがロシアに首根っこ掴まれている」的なことを言う人がいるのは結構な割合でエネルギーの輸入をこのパイプラインに頼っていたためです。
※天然ガスのパイプラインの代表的なものには「ノルドストリーム」が挙げられます。こちらもドイツまで伸びるパイプラインとなっています。
お次は天然ガスにいきましょう。
※計3.8兆㎥。2017年のデータ(GAKKEN『わかるをつくる中学社会』のグラフから作成)
原油と同じくエネルギー源として使用することも多く、こちらもロシアは世界有数。
加えて、天然ガスの場合はエネルギー源としてだけでなくメタノールやアンモニアといった化学品の材料としても使用され、中でも天然ガスから精製されたアンモニアは肥料の原料にもなっています。
なお、現在戦争中のロシアとウクライナ間で天然ガス供給に関して(ソビエト連邦崩壊後に)供給や料金設定で揉めたことに端を発した紛争が以前から複数回(2006年、2008-2009年、2014年)発生していました。
他にも2014年に親露政権が倒れて親欧米政権が生まれたなど複数要因が重なって現在の情勢となっていますが、ここら辺の事情は別記事でまとめていこうと思います。
主な鉱産資源の輸出先
まずは石油・石炭・天然ガスから。
額としては173億2000万ドル(日本円で2兆172億3736万3149円。22年3月11日13時現在)の取引額でかなり巨額な取引です(2017年度)。オランダ・中国・ドイツで約40%を占めています。
※経済産業省 通商白書(2018HTML版)ロシア及び中央アジアの『ロシアの主要輸出品目』より作成
そのうちオランダ・ドイツはともにEU(欧州連合)を構成する国家。EUでは両国の他にイタリア、オーストリア、ハンガリーなどもロシアのエネルギー供給に依存していたようです。そのため、電気代や暖房費の高騰などがニュースで話題になっていました。
同じく鉱産資源の一つ、鉄鋼を見ていきます。
※経済産業省 通商白書(2018HTML版)ロシア及び中央アジアの『ロシアの主要輸出品目』より作成
こちらも結構なやり取りをしているのですが、鉱物性燃料と比較して大体10分の1の取引額となっており、いかにエネルギー関係の取引が多いかが分かります。
また、輸出全体で見てみると(品目関係なく)貿易相手国としてはEUが約44.7%で半分近くを占めています(2017年)。
輸入相手の時にはEUの割合が若干下がり、アメリカ・日本が入ってきます。
というわけで、北アフリカ、中東、ヨーロッパ、東アジア、北米...
大国なだけにロシアは様々な国々と大きく関わってきたのが分かります。次回からは今回の地理を前提に歴史について徹底的に調べていこうと思います。