わかりやすい日韓基本条約の締結の背景や賠償金・請求権問題
最近、様々なメディアで日韓問題について取り上げられていますが、この時に度々耳にする日韓基本条約と言う単語。条約締結の事実は知っていますが、実際の内容などをよく理解しない人は私だけではないはずです。
今日の、日韓問題を見ていくうえで日韓基本条約は戦後の日本と韓国の関係を理解すると少し見方が変わると思います。
そこで、この『日韓基本条約』の条約締結に至る背景や条約の内容・その後の影響などについて簡単にわかりやすく紹介していきたいと思います。
日韓基本条約とは?
この条約には、正式名称があり【日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約】と呼ばれ、1965年(昭和40)に日韓の間で結ばれました。
この条約締結後に、日韓両国の国交が正常化されました。
日韓基本条約では、1910年8月22日以前に日本と韓国の間で締結された、全ての条約と協定が無効である事と、韓国政府が朝鮮半島にある唯一の合法国であることが確認されました。
また、条約締結に合わせて、日本が朝鮮半島の支配時代に築き上げたインフラ・資産・権利を放棄し、韓国に巨額の資金を提供することで、日本が韓国に対する経済協力や日韓両国間の請求権の最終的な解決などが取り決められました。
日韓基本条約の締結に至る背景
1910年8月22日頃の日本は、韓国を含む朝鮮半島を併合し、植民地支配を行っていました。しかし、第二次世界大戦で敗戦国となり、1945年8月のポツダム宣言を受け入れたことによって、日本の朝鮮半島統治は終焉を迎えます。
その後の朝鮮半島は、北緯38度を境に分断され、ソ連は北部を、アメリカは南部をそれぞれ占領し、朝鮮半島に北朝鮮と韓国と言う国家が誕生します。
1950年には、ソ連とアメリカの対立が激化し、朝鮮戦争が勃発し、東西陣営の攻防が繰り広げらた結果、1953年に休戦協定が結ばれ現在に至っています。ようするにまだ、戦争は休戦と言うだけで、終結はしていないと言うことなのです。
実質、終わってはいるのですが、正式に終了したとはなっていないんですね。
1951年にサンフランシスコ平和条約が締結されて、日本の主権が回復すると日韓国交正常化に向けて交渉が開始されました。この交渉は、賠償金などの戦後補償や歴史認識などの問題を抱えており、度々意見の対立する事となる交渉となりました。
1961年に韓国で朴正煕政権が発足すると、日本との交渉は本格化していきました。
朴正煕大統領は、韓国の経済発展を重要視し、日本から戦後補償で多額の資金を引き出すことを考えました。こうした背景の下、1965年の日韓基本条約の締結に至ることになります。
日韓基本条約の主な内容
厳しい交渉の結果、1965年に日韓基本条約が締結される運びとなりました。
日韓基本条約は全7条で構成されています。
- 第一条…両国内に領事館を設置し、共に外交官を派遣する事。
- 第二条…1910年8月22日前に両国間で締結された条約及び協定はもはや無効であることが確認される。
- 第三条…大韓民国は、国連総会決議195号に示される通り、朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。
- 第四条…両国は、相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とするものとし、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たつて、国際連合憲章の原則に適合して協力するものとする。
- 第五条…その貿易、海運その他の通商の関係を安定した、かつ、友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定を締結するための交渉を実行可能な限りすみやかに開始するものとする。
- 第六条…民間航空運送に関する協定を締結するための交渉を実行可能な限りすみやかに開始するものとする。
- 第七条…この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この条件は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
以上の証拠として、それぞれの全権委員は、この条約に署名調印した。
少し解説していきます。
第1条では、日韓両国に領事館を決められた場所に設置し、国交が樹立した旨が書かれています。
第2条では、日本による韓国併合以前に、両国で締結された条約及び協定は全て無効とすることを確認しています。
この条文には、批判もあるようで、文面のもはや無効という言葉が過去の日本支配が合法的に行われたかのような意味合いにも取れ、日本の責任をあいまいにしていると言う声もあります。
第3条では、一見すると、北朝鮮を合法的な政府として認めず、韓国を朝鮮半島の唯一の合法的政府とすることを確認していますが、日韓基本条約は休戦ラインの北緯38度線以南についてのみ効力を有すると国会答弁で述べています。
要するに、北朝鮮を合法的な政府として認めないと言う意味ではないようです。
一方で、韓国側は北朝鮮を合法的な政府として認めない旨として認識しているようで、ここでも日韓の解釈のずれが生じています。
以下の条文は、両国の物流や人の行き来などについて書かれており、最後には速やかにこの条約を実行し、お互い書面にしましょうと言うような事が書かれています。
この日韓基本条約の締結と共に、【財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定】が両国の間で取り交わされました。
これには、日本が朝鮮半島に投資した資本及び日本人の個人財産のすべてを放棄し、約11億ドルの無償資金と借款を援助するとし、日韓両国の及び国民間の請求権に関する問題は、完全かつ最終的に解決されている事を確認しています。
日韓基本条約締結による影響
韓国の経済の発展
日本が韓国に提供した約11億ドルの無償資金と借款の資金の用途は、韓国経済の発展に役に立つものではならないと定められていました。
韓国政府は、日本との交渉中にこの資金を軍人や労働者として日本に徴用された者の遺族に対し、個人補償金を提供するとしていましたが、資金等の大部分は、韓国国内のインフラ整備や企業への投資に使われました。
これにより、漢江の奇跡と呼ばれるほどの経済発展を起こさせました。
請求権問題への発展
日韓基本条約の締結に伴い、日韓の両国間及び国民間の請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されていることが確認されましたが、韓国政府や韓国メディアは、この事実を国民に積極的に周知していなかったそうです。
そのため、韓国国内では日本に対し、国交正常化以降も日本への補償を求める訴えや抗議活動が続いています。