明治時代の聖域なき構造改革【富国強兵】で日本の軍隊が強くなった
明治時代アジアの新興国だった日本が、大陸の覇者・清や世界最強クラスの軍事国家・ロシアを次々と倒してしまうのだから先の未来はわからないものです。
その勝利の理由が明治政府が推し進めてきた富国強兵に他ありません。
産業を振興する事で国を富ませ、その財力を使って強い軍を作ると言う国策が富国強兵になります。もちろん日本だけではなく世界中の後進国が同じことをしていたのですが、日本だけがそれを成し遂げることが出来ました。
どうして新興国日本が戦争に強い軍隊を作る事が出来たのでしょうか??
富国強兵とは??
富国強兵は、明治に押し進められた改革の総称の事を言います。
文明開化によって西洋文化や工業技術を積極的に取り入れ、地租改正で税制を整え財源を確保。そして、殖産興業によって造船業や紡績業、鉱山などの様々な産業を立ち上げて、それで得た技術や資金をフルに利用して強い軍隊を作ると言うのが流れでした。
制度を変えれば、これまでの制度で利益を得ていた人々の反発が生まれるのが懸念材料でした。現に19世紀から20世紀にかけてアジア諸国では泥沼の内戦が起きて、その混乱の乗じて国土を奪われたり植民地にされてきました。
日本と他の国との違いは、国トップたちが西欧諸国の侵略に多大な危機感を抱いていた事。岩倉使節団が西洋視察のよって、そのすさまじさを知り震え上がったと言います。このままでは西洋の奴隷になってしまうと言う危機感から不可能と思われる大改革を成し遂げたのです。
アジア初の国軍の誕生
富国強兵の『富国』を殖産興業で成し遂げた日本は、次なる改革である強兵を目指すことになります。ここでも国を揺るがすほどの大改革が待っていました。
明治維新後に日本各地には、諸藩が持つ武士団が点在していたが、明治政府はこの武士団を全て解体します。そして、薩摩・長州・土佐藩などの明治維新の主役となった藩から人員を集めてアジアで初の国軍を作りました。
一見、武士団をそのまま国軍にした方が効率が良い気がするが、武士団とは私兵の集まりで近代的な訓練も受けておらず、事犯との結びつきが強くありました。これが扱いづらく、放置すれば軍閥化し、内戦の火種になる恐れもありました。
こうしたリスクを避けるためにすべてをリセットする必要がありました。
それでも一部の武士たちが反発し西南戦争が勃発しますが、こうまでしても国軍を作る必要がありました。
国軍のメリットは、指揮系統が一本化され訓練や武器を統一する事が出来ます。
現に西洋諸国に取り込まれたアジア諸国の軍隊は統制が取れていない私兵集団でした。一方で西欧諸国は統制が取れており、列強と渡り合うには近代的な国軍が必要不可欠となったのです。
日本でも、国軍の創設共に兵力確保の手段として徴兵制度を導入しました。
原則的に男子全員に兵役の義務を課し、早い段階から少ないコストで大規模な軍隊を維持する事が可能になりました。これが、日本軍が強くなった一つの理由です。
徴兵制度の対象は満20歳以上の男子で、春先に通知が届き、身長・体重や病気の有無が検査され、合格者の中から抽選で選ばれる仕組みでした。
徴兵制と言われると太平洋戦争末期のイメージがあるが、この時代の徴兵制は少し事情が違いました。合格者のハードルが高く、10人に1人から2人くらいの確率でしか合格者が出なかった上に、一家の主や後継ぎ、学生などは兵役を免除される事になっていました。
兵役が国民の義務とは言え、実際に兵隊になったのはごくわずかだったと言えます。
徴兵される人数が増えるのは外国との戦争が現実的になってきた1880年代後半で、1889年には一家の主も兵隊にとられることもあり、やがて徴兵制が17歳に引き下げられます。
昭和になるとさらに合格基準が甘くなり、終戦間際の1945年には徴兵検査を受けたうちの9割が兵隊にされました。
いつの時代も徴兵されるのは嫌がるもの
徴兵制度が始まり、明治初期から中期にかけて養子縁組が異常なほど増加すると言うおかしな現象が起こり始めました。
これには、先述した一家の主が徴兵を免除される事から、男子のいない家庭に養子に入りその家の主なり徴兵を回避しようとする人々が続出した為でした。国のためとはいえ、実際には多くの国民は戦争なんて行きたくありません。そのために編み出されたのが養子縁組だったようです。
この方法は、1889年の徴兵制度改正で使えなくなるが、他にも病気免除を利用し、検査前に指を切ったり、骨を折ったりするなど、現在のロシアの徴兵逃れと同じことをしていました。
また、6年以上の禁固刑を受けたことのある者が兵隊になれなかった事から、わざと犯罪を犯す者やシンプルに疾走する者もあらわれました。
日本が西洋列強と肩を並べることが出来た富国強兵策ですが、その裏側では様々な騒動が起こっていたのは教科書にはあまり書かれてません。