東南アジアの地理・気候・特徴を見てみよう
最初に東南アジアの場所を確認しましょう。日本の西南にあり、赤道直下とその周辺に位置します。
今回は、そんな東南アジアの地理的な特徴や気候などをまとめてみます。
東南アジアの地理的特性を見てみよう
東南アジアを構成する地域はピンクの点線で囲まれたインドシナ半島と、その南部に連なるマレー半島、さらに数多くの諸島部から構成されています。
アルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯のぶつかる部分…ということで造山帯に沿った地域では山が非常に多く、地殻変動のために地震や火山活動が頻繁に起こりやすい土地です。
時に世界史全体に影響を及ぼすような火山噴火もありました。インドネシアの『トバ火山』『タンボラ火山』、ジャワ島とスマトラ島の間にある『クラカタウ火山』などが有名です。
噴火後に世界的に『火山の冬』となり、各種疫病や飢饉などを引き起こすことで政治的な革命に繋がったような例が幾つもあったようです。
スラウェシ島が K のような変わった形をしているのも二つの造山帯の間に位置していることで変な力が加わったためと言われています。
諸島部は造山活動の活発な地域ですので、3000~4000m前後もある高めの山も複数存在しています(大陸部にある古期造山帯に属するアンナン山脈の最高峰は3000mに届きません)。
なお東南アジアの最高峰は、ヒマラヤ山脈に属する5881mのカカボラジ山(ミャンマーの北部にあるため地図では見えません)です。
大陸部の地理的特性
東南アジアで最長のメコン川をはじめ、大陸部では地図の更に北部にある山地(ヒマラヤ山脈やチベット高原)から流れ出てくる長大な河川が複数存在し、デルタを形成しています。
諸島部の地理的特性
諸島部は降水量が多い場所が多いうえに山の多い土地柄ですから、高地から河川が流れ出て平地を横切るような地形となっています(ただし、島と季節によっては乾燥が強く乾季に川が干からびる場所もあるそうです)。
暖かく水が豊富ということで、フィリピンやインドネシアなどの諸島部でもコメが作られています。ルソン島では山も多いので日本と同様、棚田の風景が見れるようです。
東南アジアはどんな気候?
東南アジアは赤道直下や周辺に位置しています。赤道周辺は年間を通して太陽からのエネルギーを受けやすい場所です。
というわけで、いずれの地域も年間を通して気温が高い傾向にあります。基本的に東南アジアは
- 年中雨量の多い『熱帯雨林気候』
- 弱い乾季と雨期がある『熱帯モンスーン気候』
- 雨期・乾季がハッキリ分かれた『サバナ気候』
に分かれます。
理科の授業で習った図を見たら分かりやすいのですが、赤道付近は季節問わず太陽が当たって海水が蒸発。結果、赤道付近の地域は年間通して上昇気流が発生しやすくなり、雲が多く作られて雨が多くなります。
一方、赤道より少しだけ北側や南側に位置する地域は太陽の当たり方が夏と冬で異なるため気温差がありますので、雨期・乾季が出て来ます。太陽が当たって暑い時期には雨が降って雨期になるのに対して、太陽の当たりにくい時期には雨雲が作られにくく乾季となるのです。
また、雨雲は気流が山にぶつかり上昇することで出来ることもありますし、雨雲自体がモンスーン(季節風)の影響を受けることもあります。
こうした環境もあって、東南アジアは蒸し暑い場所だけに限らず乾季には雨が殆ど降らず乾燥が強い場所もあるようです。
インドシナ半島とマレー半島
インドシナ半島の大部分が雨季と乾季のハッキリとした『サバナ気候』、そしてマレー半島中部以北とインドシナ半島の一部が『緩やかな乾季と雨期に分かれた熱帯モンスーン気候』となっています。
インドシナ半島の大部分が『サバナ気候』なのは、10~3月に吹くモンスーンが乾燥した大陸からやってくるためなので分かりやすいですね。
また、ケッペンの気候区分の地図にある最西端の一部が『熱帯モンスーン気候』となっていますが、ちょうどイラワディ川の西の山脈と重なります。これは山脈のある場所では上昇気流が出来やすいという部分に由来していると思われます。冬でも暖かい地域ですし。
一方のマレー半島の南部以外が『熱帯モンスーン気候』なのは地図を見ると理解しやすいです。冬場に吹くモンスーンが、インドシナ半島の一部を通ることで乾燥した風となり
タイ湾を通る時に多少水分補給をしてからマレー半島の一部に到着。そのため、雨季程の雨は降らずとも弱い乾季がある気候となっています
諸島部
続いて東南アジア諸島部を見てみましょう。
フィリピン諸島の場合、山が多い島ということもあって地域ごとに『熱帯雨林気候』『熱帯モンスーン地方』『サバナ気候』などバラエティ豊かな気候です。
北半球にあるので、雨期乾季に分かれているような場所では、6~10月頃に雨期、11月~翌2月頃に乾季となります。
ジャワ島は『熱帯雨林気候』『熱帯モンスーン気候』『サバナ気候』が入り乱れた気候区分ですが、ジャワ島より東側の複数の島嶼は『サバナ気候』となっています。
こちらは南半球ですので、フィリピン諸島とは逆の時期が雨期・乾季です。
東南アジアの農業
基本的に暖かく海に囲まれた地域が多い場所のため、水が豊富な所が多いのが東南アジアです。
中でも大陸部では、メコン川などの大河が運んでくる大量の土砂が土地を肥沃にしてくれている他、豊富な水量もあり、尚且つ険しい山もないので水田地帯が広がりました。
2014年度の12位までの米の生産量ですが、ランキングにはかなりの割合で東南アジアの国々が入っています。
日本はともかく、中国・インド・ブラジル・アメリカなどの面積が大きい国が並ぶ中で米生産ランキング上位入りは決して偶然じゃありません。東南アジアは暖かいので二期作が可能な場所があることもランキング入りしている理由の一つです。
もちろん古い時代にここまで収穫できるほどの田園が広がっていませんが(本格的な農業開発は19世紀以降)、少なくとも米のような穀物を大量に栽培できる環境があるってことは頭の片隅に入れておくと良いかと思います。
一方で、狭い島嶼では山がちで雨が豊富という特徴から洪水などで肥沃な土壌が流れやすい傾向にあるようです。勿論、全てではありませんが。
そんな理由から熱帯雨林の中で焼き畑農業を行う場所が多いです。熱帯雨林を焼いた灰によって土壌改良が促され手っ取り早く農業を行える理にかなった方法なんだそうで、ヤムイモの一種やタロイモなどが育てられています。
なお、タピオカで有名なキャッサバも採られますが、原産がブラジルなので時代がだいぶ下った後の栽培となっています。
そして東南アジアの農業の中で忘れていけないのは香辛料の栽培です。この香辛料が採れる土地というのが大航海時代をもたらす一因にもなりました。
東南アジアの特徴・まとめ
東南アジアの地理的特徴は以上になります。歴史を学ぶ上で覚えておいた方が良さそうなのは、
- 雨が多く降るために川がたくさんあり水運に困らない
- 穀物が豊富にとれる土壌がある
- 香辛料が豊富
という部分。
東南アジアのご近所にある昔からの大国(中国やインド、さらに西のアラビア半島)同士がやり取りするにはヒマラヤ山脈を通るよりも確実に海上交通を利用した方が物資を大量に運べる分、効率的。港になるような街が幾つも整備されています。
豊富な香辛料を求める商人もいるわけで、海のシルクロードとも呼べる航路が紀元後1~2世紀には既に確立されていました。
航路が確立し人々が多く集まるようになっていたということは、海外の文化や文明が入りやすく交易によって経済面が潤いやすいことに繋がります。穀物も豊富に取れるのである程度人が集まっても食べられるでしょう。
そんな環境もあって、東南アジアでは古い時代からインド・中国・イスラームの影響を受けた独自の文明が築かれていきました。
なお、地図は白地図専門店(外部リンク)さんの物を加工させていただいてます。ありがとうございました。