中国の地理・気候・特徴を見てみよう
中国は日本のお隣で古い時代から縁の深い国ですね。これまでの歴代王朝はその都度範囲が異なりますが、今回は現在の中華人民共和国の範囲に焦点を当てて調べていきます。
中国の地理的特性を見てみよう
中国の地理的な特徴として挙げられるのが盆地や高原、大地、丘陵地帯に砂漠など多様性に富んだ地形をしているという部分です。中でも多いのが山地、丘陵地などの標高の高い地域で、国土の7割を占めています。
中国国内の主な山脈とは?
中国国内は標高の高い地域が約7割というだけあって多くの山脈も存在しています。特に有名なのがヒマラヤ山脈とカラコルム山脈。時と場合によっては広義のヒマラヤの定義ではカラコルム山脈も含まれることもあるようです。
- ヒマラヤ山脈:世界最高峰 エベレスト (8848m)
- カラコルム山脈:世界第2位の標高の K2(8611m)
という訳で、世界の中でも非常に険しい地形を有しているのが分かるかと思います。そんな中国をヒマラヤ山脈から華北平原南部を結んだ線を断面で見てみると
このように西高東低の階段状の地形となっています。この地形が食糧生産の出来不出来に直結し、人口分布まで影響を与えるわけです。
標高の高いところは寒くて植物が育ちにくく、食糧生産があまりできません。中国の西南部ではヒマラヤ山脈があるだけあって特に顕著です。そんな理由もあって、中国国内の人口は西<東となります。(下の地図だとインドの北にかかってる地域の人口密度が1人/㎢未満となってます)
中国にはどんな川があるの?
中国の地理を語る上で忘れてはいけないのが、黄河と長江という二大大河。北にあるのが黄河、南にあるのが長江と呼ばれています。
- 黄河 (5464km):チベット高原の東端 (バヤンカラ山脈:崑崙山脈の一支脈)から始まり、蛇行して渤海湾へそそぐ川。
- 長江 (6300㎞):全長で世界第3位の大河。チベット高原を水源地とし、東シナ海へと注ぐ川。
歴史を学ぶ上でこの二つの川の存在は欠かせません。どちらもチベット高原のある高地から流れた大河です。
黄河周辺の地形を見てみよう
世界史を学ぶ際、最初の方で学ぶのが文明の誕生。この時に必ず黄河・長江が出てきます。
黄河では中・下流域で古い時代から文明が栄えていました。黄河の中下流域は地図で見てみると黄土高原と華北平原があるのが分かります。華北平原は古くから中原と呼ばれる地域を中心とした平野で、中国の歴代王朝は中原を目指していたと言っても過言ではないほど歴史的には重要な土地になります。
地理用語で言うと
- 高原:標高の高い平地、谷が発達していない山地
- 平野:起伏がほぼない平坦な低地が広がる地形
のことで、どちらも平らな場所が広がっています。黄土高原は現在でこそ過去に起こった戦乱や森林伐採、開墾、放牧などで砂漠化が進んでいますが、元々は自然豊かな土地でした。
砂漠化に進む道が決定的になったのが万里の長城を作る際の煉瓦を焼くために木材を大量に切った時だと言われています。なお、現在進行形で日本にやってくる黄砂は、この黄土高原も主な発生地の一つです(後述する気候の地図を見て頂ければわかりますが、黄土高原周辺は乾燥地帯と一致します)。
一方の下流域に広がる華北平原は中国で東北平原に次いで2番目に広い平野です。大きさはなんと日本の面積の 4/5(=31万㎢、日本は約37万8000㎢)もあるとか。流石に大陸はスケールが大きいですね。
極寒の荒れ地がメインの東北平原に対して、華北平原は大河が流れた平らな温暖な土地ということで、古代から現在までの中国において非常に重要な土地となっています。
長江周辺の地形を見てみよう
長江は青海省のチベット高原を水源とする全長6300㎞の大河です。別名では揚子江とも呼ばれています。長江周辺の長江文明も中下流域で、長江と黄河の間にある四川盆地の辺りでも文明が発生しています。
長江の中下流域にも農業のしやすい長江中下游平原と呼ばれる中国で3番目に広い平野が広がっています。最も人口の密集した地域でもあり、四川省と湖北省の省堺にある三峡以東に位置しています。
三峡といえばダムで有名な場所ですね。2020年には決壊すると実しやかに騒がれていたあの三峡ダムです(結局、決壊はしなかったものの広範囲で洪水を起こしました)。また、湖北省の州都は武漢市。こちらも2020年度には新型コロナの発生地としてかなり話題に上った地域です。
これら二つの大河は中国の歴史と密接しており、古くから長江は『江』、黄河を『河』とだけ記されていたほどです。『江蘇省』『江西省』『浙江省』などは長江の下流域に位置し『江南』と呼ばれる地域は南岸地域を指す他(『江北』と呼ばれる地域もある)、黄河周辺では『河南省』『河北省』といった地名があるので、現代も含め位置関係を掴むのに覚えておくと良いかもしれません。
中国の気候を見てみよう
中国は気候に関しても地理と同じく多種多様。南に位置する海の側では温暖湿潤気候があったり場所によっては熱帯気候、ツンドラ気候まで存在しています。
基本的には大陸性の乾燥した気候です。ただし、春から夏にかけてモンスーンが海の方から吹いてくるために温暖で湿った空気がやってくる地域では多雨の傾向が見られます。ものすごく簡易的な気候区分ですが、凡その傾向は分かるかと思います。
特に歴史の勉強をする際には
- 黄河の中下流域は基本的に『寒い・乾燥』した気候
- 長江の中下流域は『温暖で雨が多い』気候
といった部分(加えて平地の広さ)を覚えておくと、その土地で作られる農作物の特徴と直結するので人口や国力を連想しやすくなるかもしれませんね。
中国ではどんな作物が作られているの??
これまで中国の地理や気候をまとめていきましたが、まとめてみると
- 東北部:平野が広がるが寒くて乾燥
- 北部:砂漠地帯が広がる乾燥地帯が多い
- 南西部:とにかく険しい山が連なり、寒い
- 東部:温暖で雨が多く、平地もある
こんな感じになるかと思います。
また、少し思い出してもらいたいのが(古代オリエントの世界でもちょろっと書いたのですが)
- 砂漠:そもそも農業にあまり向かない
- 乾燥地帯:麦の栽培に向く
というもの。
砂漠地帯…特にタクラマカン砂漠の地域では非農業地域が多く広がっているのが分かりますね。ゴビ砂漠にかぶっている部分も所々非農業地域が点在しています。
ヒマラヤ山脈周辺も標高が高くてあまり農耕には向かない土地ですので、牧畜が発展しました。牧畜と中国と言えば遊牧民!世界史の随所随所で遊牧民の存在感が光ってきますので覚えておいて損はない!!と思います。むしろ覚えておいて下さい。
日本にもやってきた元寇の元をたどればモンゴルで遊牧生活をしていた騎馬民族ですし、ヨーロッパに大きな影響を与えたフン族も中国の北方にいた匈奴(フンヌ) の子孫説まであるくらい世界史には大きく関わってきます。
ちなみに中国の山羊のうち、チベットや内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区などではカシミヤヤギが育てられているそうです。カシミヤといえば非常に稀少で価値が高く、高級なセーターやマフラーなどで使われているので聞いたことがあるかもしれませんね。
砂漠地帯とヒマラヤ周辺以外を見てみると、メインとなる農作物が大きく
- 北部:小麦・大豆などの畑作
- 南部:稲作や茶の栽培
に分かれているのが分かります。これは料理にも表れていて、現在でも中国の主食は北部が小麦メインの饅頭(マントー)、南部が米メインとなっているようです。特に最南部では暖かく水が豊富で二期作が行われるほど稲作が盛んです。
それぞれの作物の特徴とは?
近年では品種改良を重ねて寒さに強い米が作られるようになりましたが、元々米は暖かくて水の多い場所が原産の植物です。
米にも種類がありますが、約一万年前の長江流域でも見つかっていたジャポニカ米は温暖で湿潤な気候の地域や夏場に割と高温になるような亜寒帯の気候の下で作られています。中国南部の気候に合致しています。ちなみにジャポニカ米は日本にいたらなじみ深いお米です。
お茶も日本だと静岡や鹿児島(長年ランキング1位だった静岡でしたが2020年は鹿児島に抜かれてしまいました)が有名ですが、両県以外のベスト10の中に九州の県が4つも入っていることから分かるように、暖かい場所で栽培されています。
中国でも暖かい場所で作られているのは同様で、茶の知識を記した唐代の文筆家・陸羽は『茶経』という書物の中でお茶の樹を「南方の嘉木」と記しているほど。とは言え、中国でもお茶は広く一般的に飲まれているので近年では結構北の方でも作られるようになっているようです。
小麦は分かりやすいパン食の地域(ヨーロッパ)から連想したら分かるように…大豆はロシアやウクライナでも生産できるほど涼しい場所でも栽培可能なように、冬場寒くなるような場所でも栽培が可能です。ということで北部では小麦や大豆が多く作られています。
更に東北部では別の食料獲得手段として(現代では定住化が進んでそのような生活はなかなかお目にかかれませんが)狩猟・採集・漁労で生活を営む人々がいたそうです。
コーリャン(別名:モロコシ、原産国:エチオピアが有力)やトウモロコシ(原産国:南米)は後世になってから入ってきましたが、現在では広く生産されるようになっています。