日本史

大日本帝国憲法とは?内容や特徴を簡単に解説

歴ブロ
『憲法発布略図』1889年(明治22年)楊洲周延画より

1889(明治22)年2月11日に公布され、1890年に施行された大日本帝国憲法は日本が近代的国家体制を確立するうえでの根幹をなした憲法です。

東アジアで初めて定められた近代憲法で、現行の日本国憲法(1946年公布、1947年施行)が制定される1946年まで改正されずに56年ほど施行されました。

ここでは大日本帝国憲法を制定するまでの過程や内容、特色について簡単にまとめていきます。

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大日本帝国憲法の制定

激しい自由民権運動のさなか、自分たち主導の立憲政治の実現を図るためにヨーロッパの諸制度を調査しに行った伊藤博文

イギリス風の議会政治を主張する派閥大隈重信立憲改進党やフランスの議会政治を主張する派閥板垣退助自由党などもありましたが、最終的に君主が中心の憲法を持つドイツの憲法を参考すると伊藤は決意します。

こうして1883(明治16)年に帰国して三年目に井上毅(こわし)伊藤巳代治(みよじ)金子賢太郎らと共にドイツ人のロエスエルモッセといった法律顧問たちに助言を受けて憲法の起草に取り掛かりました。

上記のような流れで完成させた草案を1888年新設された枢密院で審議。首相だった伊藤は、その立場から退き枢密院議長として憲法草案の審議に携わりました。

どれだけ力を入れていたか想像できますね。

廃藩置県後の官制
廃藩置県後の官制

ここで修正された後、1889年2月11日。大日本帝国憲法が発布されたのです。

大日本帝国憲法の内容とは?

天皇が国民に与える形で発布された憲法は、7章76箇条から成り立っています。君主自らの主張や意見を盛り込んで制定される形の憲法を欽定憲法と呼びますが、大日本帝国憲法は欽定憲法の一つとなっています。

実際にどんな内容が盛り込まれたのか、代表的なものを紹介します(読みにくいので原文はたたんでおきます)が...

Q
大日本国憲法(原文の一部)

第一条   大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第三条   天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第四条   天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
第五条   天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
第六条   天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第十条   天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ文武官ヲ任免ス(以下略)
第十一条  天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二条  天皇ハ陸海軍ノ編成及常備兵額ヲ定ム
第十三条  天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス

第一条   大日本帝国は変わらずに続く天皇によって統治される
第三条   天皇は神聖で、他者が侵してはダメ
第四条   天皇は国の元首で、憲法によって国や国民を治める権利を持つ
第五条   天皇は帝国議会の意見を取り入れながら法律を定める権利を持つ
第六条   天皇は法律を承認し、その交付や執行を命じることができる
第十条   天皇は官制の制定、行政官僚の任免権、および給与の権限を持つ
第十一条  天皇は陸軍と海軍を統率することができる
第十二条  天皇は陸海軍を編成することができ、資金配分も行う
第十三条  天皇は外国との交渉事(宣戦布告や講和、条約締結)を行う

条文の中には『天皇』という文字が多く含まれているのが分かりますね。主権が天皇にあること元首が天皇であること政治も軍も天皇が動かせますよという内容が書かれています。

ただし、天皇による統治は無制限ではなく「憲法の条文に従って」行使しなければならないと付け加えられています。天皇と言えども、好き勝手はできないようになっていたようです。

れきぴよ
れきぴよ

ドイツの「君主中心」の憲法を参考したのがよく表れています。

ちなみに日本国憲法(現行の憲法)での主権は日本国民です。当時の国民の扱いは天皇の臣下を意味する『臣民』であるとされています。国家や全体に対して従属な立場にあり、「憲法の範囲内」での自由が認められていました。

そうした内容が書かれた条文が以下の通り。

Q
大日本帝国憲法(原文の一部)

第二十七条  日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ(以下略)
第二十九条  日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス

第二十七条  日本臣民は、その所有権を侵されることはない
第二十九条  日本臣民は言論、出版、集会、結社を法律の範囲内であれば自由に行える

さらに、以前から待ち望まれていた藩閥政治ではなく選挙により選ばれた議員による政治参加をするための仕組み...帝国議会に関する条文も盛り込まれました。

Q
大日本帝国憲法(原文の一部)

第三十三条  帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス
第三十七条  凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス
第四十一条  帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス
第五十五条  国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス(以下略)
第六十四条  国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ(以下略)
第七十一条  帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ

第三十三条  帝国議会は貴族院と衆議院の二つで成立する
第三十七条  全ての法律は帝国議会の賛成を経て成立する
第四十一条  帝国議会は毎年招集する
第五十五条  国務大臣は天皇の補佐をする責任を有する
第六十四条  国家の歳出は毎年予算を組んで帝国議会の賛成を経る必要がある
第七十一条  帝国議会で予算案がまとまらない、成立しなかった時は前年度予算でやりくりすること

帝国議会は貴族院衆議院の両院で成立し、天皇に協賛して立法権を行使できること、政府が提出する予算案を審議したり議決したりできることが書かれています。

一方で、内閣の存在や国務大臣の議会・国民に対する責任については明文化されておらず後々問題となっていきます。

天皇の権力を強めるために内閣について明記しないことで「天皇直属」の組織である軍が強力化。太平洋戦争に突き進むことになりました。

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歴ブロ・歴ぴよ
歴ブロ・歴ぴよ
歴史好きが高じて日本史・世界史を社会人になってから勉強し始めました。基本的には、自分たちが理解しやすいようにまとめてあります。 日本史を主に歴ぴよが、世界史は歴ぶろが担当し2人体制で運営しています。史実を調べるだけじゃなく、漫画・ゲーム・小説も楽しんでます。 いつか歴史能力検定を受けたいな。 どうぞよろしくお願いします。
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