桃太郎に出てくる鬼は何も悪い事をしていなかった!?
昔話の【桃太郎】と言えば、ももから生まれた桃太郎が悪い鬼を退治する善を勧め悪を懲らしめる典型的なお話です。子供の頃は、親に読み聞かせをしてもらい正義の味方【桃太郎】になり切ったり、エールを送ったものです。
しかし、大人になり自分の子供たちに読み聞かせていると、「桃太郎の鬼はどんな悪い事をしたのだろう?」と疑問が残るようになりました。わざわざ鬼ヶ島まで攻め込み鬼を根絶やしにしているのですから、鬼側に相当の過失があったに違いないだろうな?と悪い大人は思ってしまいます。
でも、大義名分がなければ正義の味方【桃太郎】も鬼からしてみれば、ただの略奪者にしかなりません。また、桃太郎が鬼ヶ島から持ってきた【宝物】は、人々から取り上げられたものだったかもしれません。
今回は、そんな桃太郎に触れてみたいと思います。
実は鬼は悪くなく桃太郎が黒幕だった!?
結論から言うと、鬼が征伐されるような明確な理由が【わからない】と言うのが答えです。
最近の【桃太郎】の絵本には、鬼が畑を荒らしたり宝物を奪っていた、村の娘や子供をさらったり作物を奪っていた等の説明はあるようですが、和平交渉もなくいきなり鬼ヶ島へ乗り込んで退治するまでの理由は確認できません。
みんな大好き福沢諭吉は…
鬼たちは鬼ヶ島で平和に暮らしており他に害を与えていたわけではなかった。そこに桃太郎が突然現れて鬼を成敗し宝物を勝手に奪っていった。
自分の子供に対して桃太郎批判をしています。
絵本は子供向けのなので、本当は口にするのもおぞましい理由がそこにあるのかとも考えますが、どうもそういうことではなさそうです。
桃太郎はただの略奪者だった!?
実は、【桃太郎が悪い鬼を退治しに行った】という設定は明治以降に付け足されたもので、それ以前に出版された【桃太郎】では、【桃太郎は宝物欲しさに鬼ヶ島へ向かった】となっているのです。
つまり、明治以降の桃太郎の設定は、悪事の内容ではなく【鬼だから退治】という存在そのものが悪という理由で退治されることになったのです。要するに、鬼は悪者だと言う既成概念がだけで成り立っているのです。
これまでの理不尽な設定では、私たち親が子供に本を読んであげていると【なんで鬼は退治されるの?】という素朴な疑問に困った親たちがたくさんいた事で、現在の絵本のように【悪事の内容】が付け加えられているのだと考えます。
江戸時代と明治以降でも桃太郎は少し違う
地域のよって若干違うようですが、大まかなお話としては…
- 桃がきっかけで赤ちゃんが生まれる
- 老夫婦に育てられ鬼退治に出発
- キビ団子で犬・サル・キジを家来に
- 鬼を退治して宝を持ち帰る
また、桃太郎は江戸時代と明治時代でお話が少し違い、
- 江戸時代までは大人向け
- 明治以降は子供向け
明治維新後には読者層が変わり子供向けに改変されたとしています。
桃と言うのは、イザナギ・イザナミのお話で邪気を払う効果があり、不老不死の仙果でもあります。また、peachも【素敵な】と言う意味があり、海外でも縁起の良い果物とされています。※以下のお話に少し関係しています
江戸時代の桃太郎
- ある日、桃を食べて若返った老夫婦が桃太郎を出産。
- 大きく育った桃太郎が鬼退治の為に鬼ヶ島へ向かう。
実に桃太郎が誕生した場面が想像力を掻き立てられますが、桃を食べた老夫婦は若返り桃太郎を産んだようです。若い女の桃から生まれたから【桃太郎】とも取れます。
老夫婦に育てられたと言うのは変わらないことから、老夫婦の若返りは一時的なものであったようです。こちらのお話では、鬼退治と言うより桃太郎が生まれるまでの描写が重要視され大人向けのお話となっています。
明治以降の桃太郎
大きな桃から生まれた桃太郎が悪さをする鬼を退治するために鬼ヶ島へ
ここでの桃太郎は、子供が喜ぶように鬼退治がメインであり、ストーリー展開がバトル物となっています。 また、国定教科書に載せるために、桃太郎の誕生を【桃から生まれた】と設定しました。
明治期の急速な近代化と富国強兵による軍国主義の観点から、鬼(鬼畜米英)を退治するのが桃太郎(日本人)と言うプロパガンダでもありました。
最近の桃太郎にも変化が…
私が小さなころは、桃から生まれた桃太郎が、お供を連れて鬼ヶ島へ鬼退治に行った。と言う誰でも知ってるような内容の物語でしたが、近年の絵本には桃太郎は鬼ヶ島へ和平交渉(話し合い)をしに行ったような物語展開があるようです。
悪いとは言わないですが、最近ではドラえもんでものび太が頼もしくなってきたり、ジャイアンがいいやつすぎたりとキャラの引き立ちが薄くなったような気がします。
解釈によっては桃太郎は悪人だと言う人も
桃太郎は【極悪人】として解釈をしている人もいるようで、芥川龍之介の【桃太郎】では、鬼ではなく桃太郎の方が悪人という設定で描かれています。
桃太郎が鬼退治に出かけた理由も【仕事をするのが嫌だったから】というとんでもないものでした。よほど、おじいさん、おばあさんに甘やかされて育てられたのでしょうか?
また、降参した鬼の酋長のから桃太郎に対する問いには…
鬼の酋長 「私たちがあなた様にどんな無礼を致したのか、教えてください」
桃太郎 「もともと鬼ヶ島を征伐したいと考えていたからだ」
とまったくもって理不尽な返答をしています。
ここでの桃太郎は、【ラクして金品を手に入れたかったから、(何も罪のない)鬼の征伐に乗り込んだ】という、侵略者・略奪者として描かれているのです。
きっと明治以前の桃太郎をモチーフにして芥川龍之介が描いたのかもしれません。
坂田寛夫の小説『桃次郎』を原案とした劇団四季のミュージカル『桃次郎の冒険』では、『桃太郎』のお話のその後と、鬼の側から見た物語の世界観が描かれています。
同じ物語でも、様々な時代・作者によって書かれたものをいくつか読み比べてみると、これまでになかった新しい解釈ができるかもしれません。日本のお話でなくてもグリム童話などもほんとは怖いお話だったと言うのも言われているので、そういった目線で昔話や童話などを調べたら面白いかもしれません。